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内臓脂肪減少薬:アライの薬についていつから買える?処方条件や費用、副作用について

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2024年4月より話題になっている内臓脂肪減少薬:アライ(大正製薬)に関して、内科医としての見解をまとめましたので、ご参考にしてください。

アライ(内臓脂肪減少薬:大正製薬)とは

アライ(内臓脂肪減少薬:大正製薬)とは「アライ」は、腹部が目立つ方(腹囲男性85cm以上、女性90cm以上)を対象に、内臓脂肪および腹囲を減少させる効果が認められている、日本で初めての内臓脂肪減少薬です。
アライの効果は、生活習慣の改善を並行して実施していることが前提となります。通常、食事に含まれる脂肪は、脂肪分解酵素であるリパーゼによって分解され体内に吸収されますが、「アライ」を服用することにより、その有効成分オルリスタットがリパーゼに結合し、その活性を阻害します。これにより、脂肪の分解が抑えられ、未消化の脂肪が便として体外に排出されます。

アライはどこで買えますか?

アライは、ダイレクトOTC(医療用医薬品での発売を経ずに市販される医薬品)となり、医師の処方箋なしで市販薬として薬局ドラッグストアで購入可能ですが、要指導医薬品であるため、誰でもすぐに買えるわけではありません。購入時には、アライを安全に使用するための適切な指導を受けるために、少なくとも一か月前からの「食事内容、運動習慣、体重、腹囲」に関する記録を薬剤師に提出する必要があります。

アライはいつから買えますか?

「アライ」は、2024年4月8日に全国販売が開始されました。

アライを処方してもらう条件は?

  • 18歳以上であること
  • 腹囲(へその高さ)が男性85cm以上、女性90cm以上であること
  • 生活習慣の改善に取り組んでいること
  • 少なくとも1か月前からの「食事内容、運動習慣、体重、腹囲」に関する記録を薬剤師に提出する必要があります

薬局で薬剤師が上記を確認し、使用が適切か確認したのちに購入することができます。

肥満に対するアライの効果は?

血糖値とは「アライ」は内臓脂肪と腹囲を減少させるために脂肪の吸収を阻害します。この薬の主成分であるオルリスタットは脂肪分解酵素リパーゼの働きを抑えることにより、摂取した脂肪の約25%が未消化のまま便として体外に排出されることになります。この作用により、体内の脂肪吸収が減少し、脂肪の蓄積を抑制します。

参考:大正製薬「アライ」ブランドサイト
   内臓脂肪減少のメカニズム:https://brand.taisho.co.jp/alli/#02

GLP-1受容体作動薬とアライの比較

GLP-1受容体作動薬(リベルサス・オゼンピックなど)とアライは、肥満治療に用いられるが、作用機序、効果、副作用において異なる特徴を持っています。

作用機序

GLP-1受容体作動薬

GLP-1は、糖尿病治療薬としても使用される薬剤です。膵臓からインスリンの分泌を促し、さらに空腹感を減少させるため食欲を抑制します。加えて、胃の内容物の排出を遅らせることで満腹感を長持ちさせ、カロリー摂取を自然に減少させます。

アライ

アライの主成分であるオルリスタットは、脂肪分解酵素であるリパーゼの作用を阻害します。これにより、食事から摂取した脂肪の約25%が消化吸収されずに便として排出されるため、摂取カロリーが減少します。

効果と使用目的

GLP-1受容体作動薬

GLP-1は、体重減少を促すと同時に、血糖コントロールの改善にも効果があります。
※糖尿病患者においては、これが二重の利点となります。

アライ

アライは肥満治療に用いられ、体重減少を目的とします。糖尿病の血糖コントロールには直接的な効果はありません。ただし、体重が減少することによる間接的な利益は期待できます。

副作用

GLP-1受容体作動薬

主な副作用には吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状がありますが、使用が進むにつれてこれらは減少することが多いです。また、非常にまれですが、膵炎のリスクが指摘されています。

アライ

アライの主な副作用は、脂肪の消化吸収が阻害されることによる脂肪便、油漏れ、頻繁な排便などです。これらは食事の脂肪含有量に比例するため、低脂肪食を摂ることで管理できます。

これらの違いから、患者様の健康状態、体型、既存の疾患、ライフスタイルに応じて最適な治療選択が異なります。

GLP-1受容体作動薬を使用したダイエット方法について詳しくは下記をご参照ください。

ゼニカルとアライの比較

ゼニカルもアライは、両薬剤共に有効成分オルリスタットを含む肥満治療薬であり、同じ作用機序を持っています。

作用機序・効果

ゼニカルもアライも、脂肪分解酵素であるリパーゼの活性を阻害することで作用します。この結果、食事から摂取された脂肪の約25%が消化吸収されず、便として排出されます。これにより摂取カロリーが減少し、体重減少に繋がります。

製品の違い

ゼニカル

ゼニカルはアライと同じくオルリスタットを含む肥満治療薬でありますが、アメリカなどの海外では複数の国々で重度肥満やメタボリック症候群の治療薬として承認されているものの、日本では厚生労働省未承認の薬剤なので保険診療適応外です。取り扱い医療機関で健康保険の効かない自由診療で処方を受けることは可能ですが、未承認薬であるため海外の卸業者から輸入し仕入れた薬剤を処方する形になります。

アライ

アライもまたオルリスタットを含んでいますが、ダイレクトOTC(医療用医薬品での発売を経ずに市販される医薬品)となり、医師の処方箋なしで市販薬として薬局ドラッグストアで購入可能です。ただし、要指導医薬品として、アライは薬剤師の長期的な肥満管理プログラムの治療として使用されます。

効果と副作用

ゼニカルとアライは、どちらも体重管理において有効ですが、使用者は副作用に注意し、適切な食事療法と組み合わせることが求められます。主な副作用には脂肪便、油漏れ、頻繁な排便などがあり、これらは通常、食事の脂肪含量によって影響を受けます。

ゼニカルとアライ服用が推奨されない方

ゼニカルもアライもオルリスタットが主成分の薬剤ですので以下の方は服用が推奨されません

  • 慢性吸収障害・胆汁うっ滞のある方、オルリスタットに過敏症のある方には禁忌
  • 甲状腺機能低下症などによる病気が原因の肥満
  • 神経性食欲不振症(拒食症)や過食症の方
  • 妊娠中や授乳中の方
  • 免疫抑制薬のシクロスポリン服用中の方(併用により血中濃度を低下させてしまうため)
  • 脂溶性である抗不整脈薬のアミオダロンの吸収を抑制するという報告がある

アライの費用はいくらですか?

アライの費用について、薬剤の価格は下記の通りです。

製品名 費用
18カプセル(6日分)   2,530円
90カプセル(30日分)   8,800円

※アライは、薬剤師による長期管理が必要となる要指導医薬品のために、薬の費用に関しては、上記金額ですが、商品を使用する際は、購入される薬局・ドラックストアの購入条件を確認してください。

GLP1(リベルサス・オゼンピック)との費用比較

製品名 費用
アライ(30日分) 8,800円
リベルサス(3mg:30日分) 9,800円
オゼンピック(0.25mg:4週間分) 12,000円

※GLP-1の価格は当院で処方する金額となっております。

GLP-1受容体作動薬を使用したダイエット方法について詳しくは下記をご参照ください。

アライの副作用は?

アライ(オルリスタットを含む薬剤)の使用によって生じる副作用は主に以下の二つに分けられます。

1. 消化器症状

便が油っぽくなる
便が油っぽくなるオルリスタットは脂肪分解酵素リパーゼの活性を阻害するため、食事から摂取された脂肪の約25%が未消化のまま体外に排出されます。これにより、便が油っぽくなることがあります。
便が近くなる
便が近くなる脂肪の未消化により、便の回数が増えることがあります。
おなかが張る、下痢、腹痛
おなかが張る、下痢、腹痛消化されない脂肪が大腸を刺激することで、ガスが多く発生し、おなかが張ることがあります。また、脂肪の過剰な排出が原因で下痢や腹痛が生じる場合もあります。

2. 漏れの問題

おならをすると便が漏れる、肛門から油が漏れる
おならをすると便が漏れる、肛門から油が漏れるアライの服用により脂肪が多く含まれた便が柔らかくなることがあり、特にガスを放出する際に便が同時に漏れることがあります。さらに、消化されない油脂分が直接的に肛門から漏れることもあり、これは特に不快な副作用とされます。
【参考】

アライより以前からある「ゼニカル」が一般的に内臓脂肪減少薬として浸透しなかった1つの理由として、副作用問題がありました。外出中に下着が汚れてしまうことがあり、医師も患者様も積極的に治療薬として検討しづらくなった経緯があります。

現時点でのアライに対する内科医の見解

アライ(オルリスタットを含む薬剤)についての内科医としての見解は、ゼニカルがその副作用のため一般的な治療薬として浸透しなかった点を考慮すると、薬局で処方してもらえるというメリットはあるものの、現時点では積極的に肥満や生活習慣病の患者様にお勧めするのをためらわざるを得ません。
治療効果は期待できますが、便が油っぽくなる、便漏れ、腹痛、下痢といった消化器系の副作用を引き起こすこと、さらに肛門からの油漏れという非常に不快な副作用が患者様の日常生活に大きな影響を及ぼすことが懸念されるためです。
この副作用の課題を薬剤師さんが管理できるようであれば、状況も変わってくると考えておりますが、薬局の薬剤師さんも非常に忙しく日々勤務されているので、なかなか食事の脂肪含量まで指導できるかどうか、また患者様がそれを実行できるかどうかが懸念となります。

もう一つの懸念点としては、薬局で処方してもらうために、少なくとも一か月前からの「食事内容、運動習慣、体重、腹囲」に関する記録を薬剤師に提出する必要がある点です。いざ始めようとした際に、その日から治療にかかれず、治療までに準備期間が必要な点です。

現在は、体重管理と内臓脂肪の減少を目指す場合、他のより効果的で副作用の少ない治療方法が出てきております。GLP-1(リベルサス・オゼンピック)ダイエットもその1つです。

内科医としては、アライの効果は治療薬としてとても有効だと思います。ただ、新しい薬剤が出たことはとても良いことですが、過去の副作用の課題(ゼニカルと同様に治療中の食事管理をしっかりと行わないと副作用が日常生活に大きな影響を及ぼす可能性があること)を患者様が正しく認知していない状況で薬剤の販売が優先されることを心配しております。新しい薬が出たからそれを販売することを優先するのではなく、患者様の体の状態、生活習慣、などを踏まえ、最適な治療方法が提案されることを願っております。

アライに関するQ&A

 

アライはいつ飲みますか?

アライは食事と一緒に摂取する必要があります。具体的には、主な食事(特に脂肪を含む食事)の際に、食事を始める直前、食事中、または食事開始から1時間以内に摂取するのが効果的です。1日3回が目安ですが、食事を摂らない場合は服用を省略してください。

アライのデメリットは?

アライの主なデメリットには、副作用が含まれます。特に、未消化の脂肪が便として排出されることから、油っぽい便、便漏れ、腹痛、下痢などの消化器系の問題が発生することがあります。これらの症状は食事の脂肪内容に直接関連しているため、低脂肪食の摂取が推奨されます。

アライは内臓脂肪に効果がありますか?

はい、アライには内臓脂肪を減少させる効果があります。アライの有効成分オルリスタットは、消化管での脂肪の吸収を阻害し、脂肪の一部を未消化のまま排出させることにより、内臓脂肪の蓄積を減らすのに効果的です。ただし、最大の効果を得るためには、適切な食事制限と運動も併せて行うことが重要です。

アライは下痢になりますか?

アライを服用すると下痢になる可能性があります。これは、脂肪分解酵素リパーゼの働きを阻害することで未消化の脂肪が大量に便として排出されるためです。特に脂肪含量の高い食事を摂った際にこの症状が顕著に現れやすくなります。下痢がひどい場合は、食事の脂肪量を調節するか、薬剤師・栄養士に相談することをお勧めします。

アライを服用する際の注意点は何ですか?

アライを服用する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 高脂肪の食事を避けることで、副作用を減らすことができます。
  • アライは食事と一緒に摂取する必要があります。食事を摂らない時は服用を省略してください。
  • ビタミンA、D、E、Kといった脂溶性ビタミンの吸収が阻害される可能性があるため、これらのビタミンを含むサプリメントを就寝前に摂取することが推奨されます。
  • 妊婦または妊娠している可能性がある女性は使用を避けるべきです。
  • 服用中に異常を感じた場合は、すぐに薬剤師に相談し、場合によっては医療機関を受診してください。

アライはどれくらいの期間服用する必要がありますか?

アライの服用期間は、個々の健康状態や体重減少目標によって異なります。通常は3か月間アライを服用して効果を評価し、その後も治療が有効であると判断されれば継続することを推奨することが多いです。

アライの服用中にアルコールを摂取しても安全ですか?

アライの服用中にアルコールを適量摂取すること自体は特に問題はありませんが、アルコールはカロリーが高いため、体重管理の努力を損なう可能性があります。また、アルコールは脂肪の代謝を阻害することが知られているため、アライの効果を減少させる可能性があります。

アライの副作用を管理するためにはどうすればいいですか?

アライの副作用を管理するためには、以下の対策が有効です。

  • 低脂肪の食事を心がける。
  • 食事の脂肪内容を日記に記録し、摂取量を管理する。
  • 消化器系の不快感が現れた場合は、食事の内容を見直す。
  • 必要に応じて薬剤師や栄養士と相談し、食事計画を調整する。

そのため、購入した後のサポート体制が整っている薬局で治療を開始することをお勧めします。

アライはすべての肥満の人に推奨されますか?

アライはすべての肥満の人に適しているわけではありません。アライは特に内臓脂肪が多い人に推奨されますが、持病がある人や特定の薬を服用している人は、副作用のリスクや相互作用の可能性を考慮して、薬剤師(場合によっては医師)と相談の上で使用するべきです。また、生活習慣の改善と併用して効果を最大化することが推奨されます。

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